Daydream Believer 4日目 - 懲役2時間 -

fj_saf12006-08-27


※今日の話は全てフィクションです。登場する施設の名称は架空のものです。
 公開されている写真は全てCGです。本物ではありません。念のため。

8月18日 4:30

ホテルで目を覚まし、窓を覗く。強風と豪雨、大荒れの天候。
既にここ長崎県も台風11号の暴風圏にある。
この状況で「軍艦島に上陸できるだろうか?」というのは愚問だ。
我々は既にプランを変更しており、本日中に長崎県から離脱することが決定している。
考えてみれば、台風上陸濃厚の中、九州へ向かうこと自体が無謀。飛んで火に入る何とやらだ。
だが、折角九州まで来たのに手ぶらで帰れるだろうか?

8月18日 5:00

ホテルをチェックアウトせずに外出する。
上空は厚い雲に覆われ、日の出の時刻を過ぎているものの真っ暗だ。
暴風と豪雨に見舞われながら、暗闇を歩く。
目指す場所は「NSKM所」。「KM所」というだけあって、周囲は5メートル以上の塀に囲まれる。
潜入難易度は国内屈指、というよりは本来の意味では脱出が困難なのだが・・・。
潜入がバレて通報されたらアウト。本物のKM所に収容される可能性もある。非常に危険な物件だ。
だが、その塀の向こうには想像を超える美しい風景が待っている、秘密の花園


30越えたオッサンが危険を冒してKM所に潜入して、一体何の得があるんだろうか?
・・・などと、全く考えてはいなかった。
「塀を越える」それだけに集中していた。もちろん準備も万端だ。
我々は@!”#$%&’()=することにより、非破戒行為で潜入に成功した。


それにしても不気味、いや、不気味を超越している。リアル悪魔城ドラキュラ。現実世界とは思えない。
高い塀に囲まれた閉塞感、強い雨と風、悪魔の手足のように大きく揺れる木々。
明治時代に建設されたKM所の赤レンガの壁には、数千・数万の受刑者の嘆き声が刻み込まれている。
正面の入り口からKM所の建物の中に入る。絶望感に打ちひしがれた受刑者が重い足取りで通ったであろう、KM所入り口だ。



辺りはまだ暗く、もう少し明るくなるのを待つことになった。
KM所の入り口に荷物を置き、暗がりの中、カメラの準備を整える。
と、入り口から建物の奥の様子を見に行ったメンバー2人の悲鳴が聞こえる。
自分の心臓もキュッとなり、カメラを準備する手が止まった。恐怖は伝播する。


「信じられない」という表情をしたメンバー2人がこちらに戻ってきた。
一人は建物の奥から光が見えたと言い、もう一人は声が聞こえたと言った。二人の怯える顔をみる限り演技ではないのは明白だった。
実際に我々以外の人間がKM所内に居る可能性もあるのだが、台風が上陸しようというこの天候の中。その可能性は極めて低い。
自分はオカルトや超常現象を信じないタイプの人間、特に「私霊感が・・・云々」言う人間の言う事は信用しない。
しかし、今いる場所の雰囲気に完全に飲み込まれてしまっていた。圧倒的な恐怖感・不安感に襲われ、引き返したい衝動に駆られる。
そんな我々が導き出した答えは「気のせい」だ。こう考えないと廃墟探索なんてやってけない。
自分がアンチオカルトである理由は「科学的根拠がない」というのが建前で、「幽霊が本当にいたら怖い、だから信じたくない」というのが本音に近い。
不都合な情報はシャットアウトしなければならないのだ。


冷静さを取り戻した我々は、空が明るむと同時に探索を開始した。






写真に関してはノーコメント。あくまでKM所をイメージしたCGなので。


8月18日 7:00

時を追うごとに酷くなる雨、無数の薮蚊の攻撃に耐え、2時間程の探索を終える。
我々は@!”#$%&’()=することにより、非破戒行為で脱出に成功した。
ホテルに戻り朝食をとり、出発の準備を整える。

8月18日 11:00

豪雨の中、移動を開始し、台風の暴風圏である九州から離脱した。



俺は必ず九州に戻るだろう。



まだまだつづく