STRAIGHT AFTER A BATH - 入浴編 -
続きものの第五話です。
車の中で3時間程度仮眠するが、暑さで目を覚ます。既に太陽は高く昇っていた。
このまま実家へ直行しようかと思ったが、もうすこし寄り道しようと思った。
今日の目的は廃入浴施設潜入だけでなく、買ったばかりのブーツの足慣らしも兼ねている。
ブーツの性能評価と足慣らしをするには、もう少し歩いてみるべきだと考えた。
深い考えもなく、母校に車を向かわせた。
6年間通った小学校。思い出の詰まった場所だ。
それにしても海から押し寄せる霧が凄い。何という天気だろうか。
標高の高い山に登ったように、目の前をモヤモヤが通過してゆく。
そんな中、母校の校庭で一人、校舎や、花壇、遊具。校舎に巣を作ったツバメの写真などを撮る。
買ったばかりの「EF50mm F1.8」という安物レンズの性能評価も行う必要があるからだ。
暫くの間母校にお邪魔させてもらったが、濃霧は一向に収まらない。
せっかくなので、濃霧が漂う海でも見ようと、海が見えるロケーションを探すことにした。
まずは港へ向かう。
もの凄い霧だが、写真にするとただの曇天のようにしか見えない。
海を見晴らせる場所へ向かう。
水平線は全く見えない。猛烈な濃霧。
この水分が大量に漂う空気はカメラに良くないな。と思い、撮影を切り上げて車に戻る。
シリンダにキーを差し込み、捻る。
ブルルルルッ・・・ブルルッ・・ブルッ・・・
ブルルルッ・・・ブルッ・・ブッ・・・
「な、なんだってーーー!」
・・・エ、エンジンが・・・かからないっぽいげじゃね?。
何度も試したがエンジンは始動する気配がない。
仕方なくレスキューを要請する決断を強いられる。
しかし、そうは問屋が卸さない。携帯電話が圏外。バリゼロ。
近くには公衆電話もない。
少し離れた場所に一軒だけ民家が見える。
その民家に向かう以外の選択肢は残されていなかった。
今にしてみれば、俺はその家に導かれていたとしか考えられなかった。