BACK TO THE PARADISE - 楽園の証明 -
つづきもの。完結編。
お墨付き 9:00 AM
険しい山を越えて突入したのが馬鹿らしくなるほど、海女さんに教えてもらった「楽園」の出入り口は
容易に出入りが可能だ。
「楽園」の出口の傍ら、カメラと三脚を片付けた。
と、カメラのレンズキャップが見つからないことに気づいた。
ポケット、リュックと隅々まで調べたものの、結局見つからなかった。
ここまでの記憶を辿り、どこでレンズキャップを紛失したのか思い出す。
確か海女さんと遭遇するする少し前までは、レンズキャップをはめていたはずだった。
紛失したとすれば、海女さんと会ってから「楽園」の出口へ向かう間。
その間、1回だけリュックを開いたのを思い出した。レンズキャップを落とすとしたら、そのタイミング
しか考えられない。
レンズキャップ。プラスチックでできていて、たかだか数百円の代物。
探しに戻る程のこともなく、諦めようとした時、あるアイデアを思いついた。
「楽園」の中に一旦もどり、まだ同じ場所に佇んでいた管理人に話しかけた。
「忘れ物をしてしまったので、取りに戻ってもいいでしょうか?」
管理人は黙って頷いた。やっぱり関心がないようだった。
これで、管理人のお墨付き?で「楽園」を調査できる。
いや、「楽園」の中で紛失したレンズキャップを思う存分探すことができる。
「楽園」の証明
ひとまず、レンズキャップを無くしたと思われる場所へ向かう。
しかし発見することは出来なかった。
でも、そんなことはどうでもいいことだった。
レンズキャップ探しを早々に断念し「ある場所」へ向かう。
クジャク飛行ショー観覧席
あらゆる建物が取り壊され、撤去される中で、
「フラミンゴ園」「クジャク飛行ショー観覧席」の立て札は手付かずで残されていた。
「取り外さなかった」のか「取り外せなかった」のかはわからないが、
この立て札だけが、今となっては「楽園」が「楽園」だったことの証だ。
撤退 10:00 AM
他にも見たい場所は沢山あったが、登山による疲労、水分の枯渇により、早期の撤退を余儀なくされた。
再び海女さんに教えてもらった出口へ向かう。
既に管理人の姿も海女さんも姿もなかった。
充足感に包まれながら、一人、「楽園」を後にする。
途中、振り返って
「ありがとう管理人さん」
「ありがとう海女さん」
「ありがとう「楽園」」
心の中で呟いた。
「さよなら」は、言わなかった。