BACK TO THE PARADISE - 楽園の証明 -

fj_saf12006-06-28



つづきもの。完結編。


第一話
第二話
第三話
第四話

お墨付き 9:00 AM

険しい山を越えて突入したのが馬鹿らしくなるほど、海女さんに教えてもらった「楽園」の出入り口は
容易に出入りが可能だ。


「楽園」の出口の傍ら、カメラと三脚を片付けた。
と、カメラのレンズキャップが見つからないことに気づいた。
ポケット、リュックと隅々まで調べたものの、結局見つからなかった。


ここまでの記憶を辿り、どこでレンズキャップを紛失したのか思い出す。
確か海女さんと遭遇するする少し前までは、レンズキャップをはめていたはずだった。
紛失したとすれば、海女さんと会ってから「楽園」の出口へ向かう間。
その間、1回だけリュックを開いたのを思い出した。レンズキャップを落とすとしたら、そのタイミング
しか考えられない。


レンズキャップ。プラスチックでできていて、たかだか数百円の代物。
探しに戻る程のこともなく、諦めようとした時、あるアイデアを思いついた。


「楽園」の中に一旦もどり、まだ同じ場所に佇んでいた管理人に話しかけた。


「忘れ物をしてしまったので、取りに戻ってもいいでしょうか?」
管理人は黙って頷いた。やっぱり関心がないようだった。


これで、管理人のお墨付き?で「楽園」を調査できる。
いや、「楽園」の中で紛失したレンズキャップを思う存分探すことができる。

「楽園」の証明

ひとまず、レンズキャップを無くしたと思われる場所へ向かう。
しかし発見することは出来なかった。
でも、そんなことはどうでもいいことだった。


レンズキャップ探しを早々に断念し「ある場所」へ向かう。



37年間フラミンゴが行進しつづけた、フラミンゴ園。


フラミンゴ園の看板。


クジャク飛行ショー観覧席




あらゆる建物が取り壊され、撤去される中で、
「フラミンゴ園」「クジャク飛行ショー観覧席」の立て札は手付かずで残されていた。
「取り外さなかった」のか「取り外せなかった」のかはわからないが、
この立て札だけが、今となっては「楽園」が「楽園」だったことの証だ。


撤退 10:00 AM

他にも見たい場所は沢山あったが、登山による疲労、水分の枯渇により、早期の撤退を余儀なくされた。
再び海女さんに教えてもらった出口へ向かう。
既に管理人の姿も海女さんも姿もなかった。
充足感に包まれながら、一人、「楽園」を後にする。


途中、振り返って
「ありがとう管理人さん」
「ありがとう海女さん」
「ありがとう「楽園」」
心の中で呟いた。



「さよなら」は、言わなかった。