BACK TO THE PARADISE - 出会い -

fj_saf12006-06-27



つづきもの


第一話
第二話
第三話


出会い系廃墟 8:30 AM

必死な思いで山を越え、辿り着いた「楽園」。
そこで女性の声が聞こえる。理解できない。
嘘だろ?一体どうやって入ったんだ?何のために?


とにかく、見つからない様に息を殺して、ゆっくりと草陰にかくれた。
女性の話し声と足音は近づき、やがて遠ざかっていった。


姿は確認できなかったが女性二人。これはほぼ間違いない。


しばらく草陰に隠れ、気配が消えてから再び道に戻った。
女性の管理人なのかもしれない。慎重に行動しなければならない。


戻ることは考えず、ホテルがあるはずの場所へ慎重に歩を進めた。



「!」
ホテルの方へ歩くと、今度は一人の男性が立っている。
再び草陰に身を隠し、ズームレンズで男性の姿を確認する。
青いポロシャツに白い無地の野球帽。50代後半から60代といった風貌。
おそらく、管理人。まだこちらには気づいていない様子。


これ以上進むと確実に見つかると判断し、物音を立てないように引き返そうとした。
その直後だった。


引き返そうとした方向から、再び女性二人の声がする。
ヤバイ。マジでヤバイ。
管理人とおぼしき男性と、二人の女性に挟み撃ちされる格好になった。
道端の草陰は全身を隠せる程深くなく、確実に見つかる。
再び、心拍数が一気に上昇し、あぶら汗が吹き出る。
絶対に見つかる。完全にお手上げだ。


ナビゲーター

どうすることもできず、カメラと三脚を手に立ち尽くす。
やがて自分の前に女性二人が姿を現した。


一人は、40代〜50代、もう一人は60代以上と思われる。
彼女達の姿を見て、一目で何者かがわかった。
大きな籠を背中に背負っており、腰に網をぶら下げている。
どう見ても海女さんにしか見えない。


彼女達は、話しかけてきた。
40代「写真とってんのかい?」
60代「にっしゃどっからへったんだ?おいねな〜」(訳:貴方はどこから入ってきたのですか?関心できませんね)


久しぶりに聞く○○弁だ。(○○は地名なので伏せる)
「こんにちは」
まず、帽子を脱いで挨拶した。
「すいません。写真撮ってたら迷い込んじゃいました。」
どう考えても不自然な回答だ。


少し立ち話をし、興味深い話を聞くことができた。
彼女達によると、過去に侵入者を管理人が通報し、警察が駆けつけるなど大騒ぎになった事件があったという。
自分に対しては警戒心というか、あまり関心すらないようで、写真を撮っていたら迷い込んだ人にしか見えていないようだ。
ただ、トラブルが起きる前に「楽園」を出たほうが良いと告げられた。
そして、彼女達は簡単に「楽園」に出入りできる場所があるといい、そこへ案内してくれることになった。


60代「いんべや」(訳:行きましょうか)


彼女達の案内のもと、「楽園」の出口へ歩き出した。
歩き出した方向は、管理人らしき男がいる方向で、案の定、男は先ほどと同じ場所にいた。
彼女達は、あの男が管理人だといい、顔見知りだそうだ。
「楽園」は海女さんの漁場への近道として利用され、管理人は海女さんの通行は容認しているそうだ。
その通行を容認された海女さんと一緒に歩いていることで、管理人の男も自分に不信感を抱いていないようだ。
勝手に迷い込んで申し訳ない旨の謝罪をしたが、管理人はさほど気にしていないようだった。


彼女達にお礼をいい、勧められた通り「楽園」の出口へ向かった。
彼女達も管理人も親切にしてくれたことだし、このまま「楽園」から撤収するのが望ましい。
再び中に戻って、波風立てるような行動をとるべきではないだろう。


本来ならば、ここで「楽園」紀行を終えるはずだった。<<つづく>>