BACK TO THE PARADISE - 突入 -

fj_saf12006-06-25




つづきもの。
第一話



動機

「楽園」への突入は以前から考えていた。
管理地域であることから、まず管理者に内部に入れないか?問い合わせてみたが答えはNG。
残された道は強行突破。
しかし、正門は厳重に閉ざされ、突入するためには山を越える必要がある。
そう、山。登山ルートがあるわけじゃない、ただの山。ただの密林。険しい道のりが予想される。
しかし、俺の記憶の中では山の稜線沿いにはハイキングコースがあったはずだ。
その稜線のハイキングコースまで辿り着ければ、そのまま園内に突入できる可能性が高い。
仕事中も、そんな事を考え続けていた。脳内登山シミュレーションで仕事が手につかない。


俺の気持ちは「行ってみたい」から、「どうしても行きたい」という感情に自然と変化していた。

出発

今回はアタック隊を編成せず、自分一人での単独ゲリラ行動とした。
その最大の理由は、確実な突入ルートが見出せていないため、突入に失敗し、ガッカリした結果に
終わる可能性が高いからだ。
険しい山越えルートを選ぶ予定だが、自分自身上りきれる可能性は低いと思ったのも理由の一つだ。
突入の突破口を発見できれば上等、突入成功すれば奇跡、くらいに考えていた。


一つ詫びなければならないこととして、AMRの主要メンバーであるナワヤ隊員、タナカ隊員に無断で行動した事。
その報告がこのブログ上の文面になってしまった事。これは本当に申し訳ないと思っている。
次回は必ず同行してもらおうと思う。

突入準備

所詮は素人の山登り。装備は限られる。
密林の枝から身を守るため、厚手の長袖長ズボン、軍手、帽子、登山靴。顔面を保護するため、鼻から下は
タオルで多い、サングラスで目を保護する。
そのいでたちは・・・まさにタイマーズ。不審者そのもの。
タイマーズのイメージ


まぁ格好はどうでもいい、問題は暑さ。
気温25度。湿度90%。その上、上記の格好。非常に厳しいコンディションだ。


アタック開始 4:30 AM

日の出とともに始動。
まず、登山できそうなルートを探る。


で、今回選択したルート。




比較的穏やかな斜面を選び、登山を開始する。
穏やかといっても直立は不可能な角度。
そして前日まで降り続いた雨の影響で、足元はぬかるんでおり、根の浅い木などは足場にならない。
足場を踏み固め、根のしっかりした木に一歩づつ近づき、また次の木を目指す。
山頂方向へ垂直に進むのはほぼ不可能で、斜め上方向の木を目標にじわりじわりと登る。


とにかく、夢中になって登っていく。カメラを取り出せる余裕もない。
ふと気づくと、滑落が命取りの高さに達している。
下山するという選択肢が頭を過ぎるが、しかし、登れたルートが下れるルートとは限らない。
既に、登るしか選択肢がない状況に陥っていた。


だが、冷静に周囲を見渡すと、下れそうな角度の斜面が発見できた。今の位置からその緩やかな斜面に
移動するのは無理だが、下山には使えそうだ。
今自分がいる斜面を上りきりさえすれば、なんとか下山は可能だ。今は頂上を目指すしかない。


両手両足を地面につき、這いつくばるように移動を続ける。
手元にはミミズや芋虫や得体の知れない小蟲がひしめき合う。湿った土は彼らのナワバリだ。
それでも手をどける訳にはいかない。バランスを失って滑落したらアウト。
多少気分が悪くても我慢。


忍耐、そして集中力。これらを切らしてはならない。
山に登ったことへの後悔の気持ち、これは切り離さなければならない。
疑念は心を惑わし、集中力を低下させるからだ。


到達への確信 5:20 AM

足腰、握力が限界に達しつつも、なんとか稜線に辿り着く。
そして、予想通り、ハイキングコース跡を発見した。
しかし歩く者がいなくなったハイキングコースは草に覆われ、油断はできない。
アップダウンが少ないのが救いだ。


廃ハイキングコース




このハイキングコースは「楽園」に通じているはず。絶対に辿り着ける。俺は確信した。
しばらくハイキングコースを歩くと、開けた場所に出た。
そして、そこには息を飲む光景が広がる。



「・・・絶景っ!・・・俺だけの、風景・・・」



しかし、感動に浸りたいのだが、疲労がそれを上回る。
今はとにかく、休息が必要だ。
朝露と汗とで全身ずぶ濡れの姿のまま、ハイキングコースに残されていたベンチに横たわった。
息を整えるつもりが、気づくと2時間以上経過していた。<<つづく>>